信州の旅　2

その日何処に泊まるかも決めず小諸で降りた僕は、3月の寒風吹き荒れる午後、どこに行く当てもなく目の前のビジネスホテルに宿をとった。もちろん降参モードである。
こういうホテルは初めてだった。チェックインを済ますと、すぐに風呂(バス)にお湯を入れ、湯船から見える位置にテレビを持ってきて、「土曜ワイド劇場」を見ていた。ふとテレビのドラマと、この空間が混ざり合い、ちょっぴり自分も大人になったかのような錯覚を覚えた。

翌日、さて何処に行こうかと考えた末、日に数本しかないバスに乗って「春日温泉」に向かうこととなった。
蓼科山北麓に面し、千曲川をはさんで浅間山がよく見えるなだらかな場所にある。
バスを待つこと一時間、さらに揺られて一時間。
寒さのため、宿に着くなり僕は一目散に風呂に向かった。
冷えた体に大地の温もりが身にしみる。
ただ「ありがたい」。それだけであった。僕は数千メートル地下から伝わってくる大地の恵みに感謝した。自然はかくも愛深いものであったのかと深く感謝した。
木造の広い風呂場からは、雪を頂いた浅間山が一直線上に水滴のガラス越しに見えた。