旅がしたいよ

僕は山歩きが好きだ。

その際、ある麓の地方都市に宿をとり、翌日バスに乗って峠まで揺られ、そこから登山というパターンをよくとっていた。

やっとのことで列車から降りると、きまって駅前の二階にある軽食屋に行った。

そこは女店主とまだセーラー服を着た中学生くらいの女の子がよく店の手伝いをしていた。

ビールと軽い食事を注文すると、わざわざその子がテーブルに来てビールを注いでくれたりもした。

まだ若かった僕は少しだけ嬉しかった。

それから何年か経ってそこを訪れた時、もうその子は立派な大人になって、おなかも大きくなっていた。

時の移り変わりに驚きならも、すこしだけ人生を感じたことを覚えている。

もうその子の子供も、はじめに出会ったあの少女のような年頃になっているだろう。

東京では夜の番組を、昼間その店のテレビで見ながら、地方の牧歌的な雰囲気に身を置く安らぎは、旅の醍醐味である。

考えてみれば、ここ何年も東京から出ていない。