バーチャルに実体はないよ

テレビばかり見ていると、実際には行ったことがないのにあたかも手に取るように、その場を知り尽くしてしまう感がある。

ならば実際その場に行ってみようかと思う人がどれだけ居て、どれだけその見聞を広めているのだろうか。

たとえば、ありきたりな海の映像をみて、ただあたりまえの光景になんの感動もなくやり過ごしてしまうのはじつにらつまらないことだと思う。

実際海に出かけてみて、潮の香りとか、怖いような波の音とか、大海原に心広がる光景などは、そこまで出かけなければ体験できない「経験」である。

その非観念的な「経験」こそが生きている証だと最近思うようになってきた。

人間はそのうち肉体的には死んでしまう。

この世の体験は、この世に生まれてきたからこそ味わえることだから、苦しいことも、楽しいこともやはりありがたいことなんだと考えるようになった。

もちろん死んでも死なない世界があるこを、経験として知っているつもりである自分だからこそ、少しでもいろいろな実体験を通して、その機微にふれていきたいと思う自分がそこにある。

短くいえば、経験こそが財産であり、バーチャルな世界はまったく自分の体験になっていないということである。

だから、どんなにつまらなくても日々の日常において、自分を新たなる場に置いてみるのも新鮮だし、決して無駄になることはないと最近思うようになった。