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クリスマスの思い出
何年も前、いやもっと昔の話だ。
とうていモテない僕と、すこし女に縁がある友達と、わざわざこの寒いクリスマスのさなか、目的を持たず、とにかく西に向かって行けるところまで行こうぜとばかり思いつきのバイク旅に出た。
一路、国道20号線を下り、普段でも渋滞の絶えないあの道は、午前10時過ぎの出発では、なかなか東京を離れることはできない。
12時ごろやっと府中のマクドナルドに寄り昼飯を食い、八王子の郊外に出たのは、午後の2時ごろだった。
陽も傾き始め、上野原の山陰を震えながら走ったのは、ある意味クリスマスの行事にふさわしいステータスと気取っていたのかもしれない。
男二人のタンデムツーリングだ。
暗くなり始め、そろそろ宿を決めようぜと塩山の公衆電話ボックスで電話帳をめくり始めた僕たちは、ひとつの民宿に目が留まった。
電話を掛け、今からでも泊めてもらえることを確認をしたのち、道を尋ねはじめた。
それはさらに山奥の秩父に近い広瀬湖に向かう途中の民宿だった。
アイスバーンに光る夜道を震えながらひた走り、なんとかたどり着いた僕たちを迎えてくれたのは、そこの家族と、年上の3人グループだった。
川崎から来た夫婦と、その友人のおじさんは快く僕らを迎え、一緒に宴会が始まった。
おそらく僕たちが行かなければ、その民宿の家族の二人分が口にしたであろうローストチキンが夕食として出された。
いくら商売とはいえ,いま思えば申し訳なく、予約もしていなかった僕たちのために、子供たちも含めた一家団欒の大事なイベントを壊してしまったのではなかったかといまだに心が痛む。
川崎から来たその友人の男性は子供が交通事故でなくなったばかりで、少しでも励ましてやろうとその夫婦が誘って今回旅に来ていたことがわかった。
客同士いろんな話をし、いつのまにか僕らはそのおじさんを励ます側に回っていた。
やはり寂しさを隠せないその男性は、持ってきたハーモニカを寂しそうに吹いた。
僭越であったが、人間は死んでも死なないよと、その人に言ってたように記憶している。
大人の仲間入りをさせてもらい、ようやく寝床についたのは午前三時ごろだった。
翌朝、僕らは酒のほとんどをご馳走になったことに礼を言い、みんなに見送られながら宿を出た。
三十という歳月を迎え否応にも歳をとったことにショックを覚えた年のクリスマスの出来事だった。
だが同時に未来はまだこれからだという強い信念もあった。
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日記
閲覧数 1878
2010/12/25 02:01
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