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草枕じゃないけど
よく「人生」を山登りに喩(たと)える人がいる。
僕も山登りしていたから、その気持ちもなんとなく分かるが、
さりとてあまりに陳腐な形容は返って人生をつまらないものにしてしまうこともある。
反対に「ひたすら苦しい思いをして何になるの」と聞いてくる人もいる。
おそらく、そういう人は頂上に登ったときの快感を得るがために、また汗をかくことに違和感を感じているのかもしれない。
じつは、そこには多少の真理がある。
頂上が目的なら、景色が目的なら、高見に上ることが目的なら、それは単なる相対的価値を求めるに過ぎない「自我」の世界である。
僕は僭越ながら、兼ねてより山に登ることそれ自体に価値があるのであって、頂上を極めることが目的ではないと思っていた。
だから、ただひたすら山道を登る。
もちろんウグイスやカッコウ、可憐な高山植物、ときどき飛んでくるアブの羽音さえ大歓迎である。
だが仮の目的は頂上であっても、苦しみながらもそれが心の充実に繋がってくる山行は、頂上に登ったときの達成感などという陳腐なもののためではないことは断言できる。
そして仮の目的と本当の目的を履き違えて「人生」を喩えることも、あまり好きではない。
冒頭の山登りを「人生」に喩えたがる人は、返って人生の「山登り」から逃げている人に多い。
地図を広げる前に、いまある困難に戯れるだけの度量があれば、すでにあなたは登山道に足を踏み入れた人と同じ道を歩いているものと知ることである。
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日記
閲覧数 92
2009/07/23 23:48
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